やまきた体験ツアーレポート 


やまきた体験ツアー
〜 山北の森を体で感じてみよう〜

2019年11月10日(日)9:00〜15:30
主催:やまきたで暮らしてみよう実行委員会(事務局:山北町定住対策課)

西丹沢はそろそろ紅葉

 今回で5回目を迎えた山北ツアー。森林と清流の山北町(神奈川県足柄上郡)で木を使ったものづくり体験と足柄茶を味わう贅沢な時間でした。

 7歳の小学生から80代の「山ガール」まで幅広い年齢層が集結。恒例となった車中の自己紹介では、これから始まる森林体験にワクワク感があふれ、車窓からの大きな富士山に歓声があがり、スタートから多いに盛り上がりました。

樹齢2000年という箒杉見学

みんなで山道を歩く

箒杉に向かう

 紅葉の見頃には少し早いこの時期、みんなで山道を歩きました。箒杉(ほうき杉)は国の天然記念物であり全国名木百選でもあります。高さ45メートル、根回り18メートル。鳥居がありパワースポットとしても人気な名所です。

森林活動の現場を歩く

杉林の前で福島さんの話を聞く

福島さんを先頭に森林を登る

 山の再生に取り組んでいる福島 実さんの案内で杉林を登ること十数分、落ち葉を踏みしめながら森林の空気を感じました。

若い世代の体験学習は森を守るしくみづくりに繋がります

 福島さんは丹沢湖畔にある通信制鹿島山北高等学校の生徒と間伐・除伐作業を継続的に行っています。森をきれいにすることで日光が差し込み見通しもよくなること、環境整備が水源を豊かにしてくれることを生徒たちも実感し、興味をもってくれているそうです。

【福島 実さんのプロフィール】
福島さん
*NPO法人 足柄丹沢の郷ネットワーク理事長・養蜂家

 福島さんは横浜市在住。NPO法人を立ち上げて山里の暮らしの知恵や文化を次世代に引き継ぐ取り組みに関わっています。縁あって山北で体験型の環境活動を続ける一方、横浜では養蜂業に魅せられて蜂蜜を製造しています。体験学習では、端材を使った暮らしの道具や玩具づくりのワークショップ等を開催。森林を荒廃から守るために間伐材の有効活用が大切とのことです。

 

丹沢湖畔で山里ランチを堪能(落合館)

みんなで昼食

 地元の食材をふんだんに使った料理をいただき、デザートにお店自慢のチーズケーキも登場、甘いモノは別腹とばかりにスイーツを楽しみました。地域の人と食の情報交換もあり。野菜をどのようにおいしく食べるかを日頃から考えていたけれど、今日のお昼ごはんから学びを得たという声も聞かれました。

地元の食材を楽しむ

木の玩具づくり体験(丹沢湖記念館)

福島さんによる説明

 山北産のヒノキを使ったおもちゃづくりです。生木(なまき)の香りを感じてほしいと福島さん。特製の専用刃物を当てて木槌で軽く叩いて動物型(イノシシ)をカットしていきます。なぜイノシシかというと、イノシシやシカの獣害が問題になっている山北になじみ深い動物だから。イノシシの子ども(うり坊)です。

トントンと木を割る音が響く

木をカットする

 ドイツに伝わる木工ろくろ技法を用いたドーナツ型の木を輪切りにしていくというもの。福島さん立ち会いで木をカットする作業が続き、うまく割れるとオーすごいという歓声。細身のうり坊や太ったうり坊が次々とでき上がりました。

色付けしたかわいい作品が大集合

集中して作業をする参加者

 次はサンドペーパーで木をなめらかにする作業と染色です。紙ヤスリをこする音が響く会場がにぎやかに。大人も子どもも真剣に作業です。好きな色を塗り、楊枝の先に絵の具をつけてちょんと目玉や鼻をつけて完成しました。

作品大集合

名産足柄茶と甘味でおもてなし(緑茶カフェ 茶ぁぼう)

緑茶カフェ

 カフェの室内や和風庭園は手入れが行き届いたゆったりくつろげる空間です。

【武 邦彦さん・武 はる美さんのプロフィール】
武さん夫妻
*緑茶カフェ茶ぁぼう 店長の邦彦さんとメニューを考案したはる美さん夫妻

 武さんは妻と母と横浜市在住。山北のカフェ経営に専念するため、エンジニアとして働いていた会社を54歳で早期退職し、その1年前からは日本茶の知識を深めて日本茶アドバイザーの資格を取得。はる美さんとともに週1回の移動日に横浜から山北に向かい、週4日営業をしています。空き家は祖父の実家で叔母が住んでいた懐かしい物件です。

山北の空き家を有効利用したいという想い

 武さんはカフェをやりたかったわけではないそうで、先祖の家を大切に管理しながら活かしていきたいと考えていました。二地域居住で暮らしの拠点は半々ですが、山北と横浜を行き来する変化のある生活を楽しんでいます。

足柄茶でもてなしたいとカフェを立ち上げ

 この地域の何を伝えていきたいかを考えたとき、山北ならではの名産品足柄茶が浮かびました。飲食店が少ないこの地域でカフェを開店するときに、足柄茶があまり知られていないということもお茶に興味をもった理由です。足柄茶とは、JA(農業協同組合)のブランドです。武さんは日本茶アドバイザーのほかに、足柄茶コンシェルジュの資格も取得したそうです。

豆腐プリンと足柄茶をいただきながら

豆腐プリンと足柄茶

 カフェ自慢の豆腐プリンは地元の豆腐店「絹華」さん特製の豆腐プリンに緑茶を使った自家製シロップをかけ、甘納豆やキウイ等のフルーツを添えたスイーツです。武さんによると、煎茶にはあまみ・うまみ・にがみ・しぶみの4つの要素があり、足柄茶は特にうまみが深い銘茶だそう。改めてお茶をじっくり味わいました。

交流会(緑茶カフェ 茶ぁぼう)

交流会

 福島さん、武さんご夫妻、湯川町長、実行委員会の津田委員長が参加して意見交換会が行われました。定住対策課の空き家見学ツアー等の案内と町長からの山北の紹介がなされ、質疑応答となりました。

参加者からのひとこと

 交流会の最後にツアーの感想を語ってもらいました。
*山北がこんなに豊かだったことを知ることができたのは、体験型の企画が盛りだくさんだったからとの声多数。
*森林を守るために植林が重要と考えていたが、除伐や間伐が大事であることがわかったことが大きな収穫。
*90%が森林という山北の豊かさが水源や環境保全のための貴重であることを改めて理解したという男性。
*足柄茶は特にうまみが強いというお茶の勉強ができたこと等、山北を訪問して始めて経験したことが多かったという女性。

最後に湯川町長からの挨拶

 普段住んでいると、富士山も水も豊かな自然のありがたさが見えてこないことがあります。今回山北に来られた皆さんに山北のよさを再発見してもらえてうれしい、と語る町長さん。山北ファンが増えてほしいと話を結びました。

               ◇◇◇
 山北を再び訪れて絵を描きたいという日本画が趣味の女性、空き家見学ツアーに魅力を感じた二人連れ、家族4人の参加者は子どもと体験を共有できたことで期待以上の旅だったようです。ご飯がおいしかったという小学生たちの素直な感想から見えてくるものは、自然のなかで人と出会い、自分の足で歩いた充実感でしょうか。